微小物体の粘性抵抗係数-02

まずは回転から.

\(\Large \gamma_{rot} = \frac{ \frac{1}{3} \pi \eta L^3}{ln(L/(2r))-0.66} \)

において,r = 5 nm, L = 0 - 100 nm,の領域で計算してみると,

となり,Lがどんどん小さくなると急激に値が変化します.これは,分母のlnの部分の影響です.

オレンジの丸は,

それぞれの粘性抵抗係数が,が2r=Lにおいて等しいと仮定した場合の点です.

ですので,L≒rの場合にはこの式は適用できないことになります.どうしたらよいでしょう?

そういうときには原点に戻れ,ということで元論文をもう一度見て

Rotational dynamics of rigid, symmetric top macromolecules. Application to circular cylinders
Mana M. Tirado and Jose Garcia de la Torre, J. Chem. Phys. 73(4), 15 Aug. 1980

を見てみると,Table II.,に,

p-1 δ
0.50
-0.216
0.45
-0.260
0.40
-0.303
0.35
-0.348
0.30
-0.392
0.25
-0.436
0.20
-0.481
0.15
-0.526
0.10
-0.571
0.05
-0.616
0
-0.662

なる表があります.

\(\Large p = L/(2r) \)

と定義されていますので,Lが十分長い場合(p-1=0)には上記式の分母の係数,-0.66,と一致します.

このテーブルの関係は,

と直線関係になるので,上記の式を変形してみましょう.すると,

\(\Large \gamma_{rot} = \frac{ \frac{1}{3} \pi \eta L^3}{ln(L/(2r)) + 0.8915 \frac{2r}{L} - 0.66} \)

となります.この式を描いてみると,

となり,かなりいい感じとなります.

しかし,たぶんこの論文に描かれているこの表は理論的・実験的な根拠があるわけではなく,多項式近似式を当てはめただけと思いますので,便宜上と思われます.

では,並進の場合を考えていきましょう.

 

l t r